染谷将太(俳優)× 手嶋慎(Makersデザイナー)

Feature 01染谷将太(俳優)× 手嶋慎(Makersデザイナー)

二人の出会いは?

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手嶋
覚えてないでしょ?多分覚えてないと思うな。
染谷
いや、覚えてる!
手嶋
絶対覚えてないよ(笑)。
染谷
じゃあ当たったら奢ってよ(笑)。
手嶋
いいよ(笑)。
染谷
代官山!
手嶋
おっ!
染谷
ペトロールズのライブ。
手嶋
そう、代官山LOOP。
染谷
ペトロールズを聞くのも、亮さん(長岡亮介)に会うのも初めてだったんだけど、岡本(英之)さんに連れられて。それで会場前にいたら、てっしーさんが来て。
手嶋
そう、それで挨拶したんだよね。よく覚えてたねぇ。

その後仲良くなったのは?

手嶋
Makersの展示会に来てくれたんだよね。
染谷
そう、Makersの話はよく聞いていたし、いいなぁと思ってて。それで、渋谷のMilokに行って初めてちゃんと話をして。
手嶋
そのときにローファーを注文してくれたんだよね。
染谷
そのころちょうどローファーが欲しかったんだけど、中々いいものがなくて。Makersのはずっと気になってたから。

その後の交流は?

染谷
それこそ、ペトロールズのライブで会ったりもするし。
手嶋
まあ、普通に飲んだりだとかね。

どんな話を?

手嶋
今日はこういう対談だからあれだけど、あんまり靴の話をしたりはしないかな。単純に気に入ってくれた人が履いてくれているっていうだけで。それが一番嬉しいし。
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Makersについて

染谷
まず、ラインがすごくきれいだということはあるけれど、そういうことだけで言えば、世の中にはそういったものはいくらでもあると思うんです。Makerの場合は、履いてみて、このデザインでこの履き心地なら絶対買うよなって。
手嶋
インダストリアルというか、どこかで工業性を求めてるところはあるんだよね。手作り感というのがちょっと苦手で。
染谷
うん。
手嶋
変な話ね、手でやればどうにかなっちゃう。けど機械を通すことで生まれる造形美があるというか。ただ、そろそろ誰かのためにというか、自分が勝手に思っているイメージの中で靴を作りたいなという気持ちも少しずつ出てはきていて。
染谷
こういう対談もそうだけど、変に前に出ない、出たくないということはずっと言ってたよね。
手嶋
そう。こないだ飲んでたときにも染めやんから言われたんだけど、「やってることはちゃんと見せたほうがいいんじゃない」って。今までそういうのは全くなかったというか避けてたんだよね。自分の中でまとまっていればOKというのがあったから。
染谷
僕ももともとはそうだったんです。自分の中で完結させて、そこで十分満足していたというか、それ以上はストレスになると思ってた。
手嶋
まさにそういうことだね。

けど変わった

染谷
そう、そこから先に出て行くようになった。自分自身の仕事に満足できた時点で勝ちじゃないかって思えたんです。何かに対してじゃなく、自分に勝ったという意味で。
いくら自分がそう思っていたって、周りからあれこれ言われたりは当然するけれど、ただ、それが本当に自分が信じたやり方で、いいものが出来上がっていると確信できているのであれば、なんにも怖くないじゃないかって。
そうやって一歩前に出て行くことで、自分はここで満足していたけど、もっと上があったなということに気づかされたり、もっとやれることがあるなという気持ちが出てくるのが面白い。

手嶋さんは勝ってる

染谷
そう、これだけいい靴を作っていたらそれはもう勝ってるに決まってる(笑)。
手嶋
(笑)。
染谷
だからもっと表に出て行って欲しいですね。出過ぎたら下がることもできるわけだし、やっぱり出て行った瞬間に角度が生まれるから。
手嶋
うん。洋服も含めてデザインをやってる人って、由緒ある学校を出ていたりだとか、バックボーンがある人が多いと思うんです。僕は0からのスタートだったから、それこそ最初はがむしゃらにやっていて、欲が詰まりに詰まったような靴しか作れなかった。なにをやるにしてもほぼ全て自分で手を入れたりね。
それが変わるきっかけは、友人が工場をはじめたときに、人に任せるということを初めて覚えたこと。そこからは本当にがらっと変わって、そういうやり方の中で作りたいものを作っていたら、気づいたら染めやんもそうだし、Makersを気に入ってくれる仲間たちが周りに集まってきてくれた。
昔は、新しいものを作ろうとか、誰もやってないことをやろうとかって考えていたけど、結局今やってることが全てだし、今は、その今やってることが新しいことになってくれればいいなくらいの気持ちでいて。今度出すローファーは、ミリ単位でしか木型は変わってないんだけど、圧倒的に履きやすくなっていて、自分の仕事は本当にそういう微妙なところで、見た目に靴が新しく変わるわけじゃないんです。
染谷将太(俳優)× 手嶋慎(Makersデザイナー)

染谷監督第二作『清澄』(2015/主演:川瀬陽太。染谷将太)

手嶋
『清澄』は配信をするんだよね。昨日の深夜にデータが届いて、ちょうど布団に入ったところだったんだけど(笑)、その場でダウンロードして見て。こういう感じで映画見るのもいいものだなって思いましたね。映画ってもちろん映画館に見に行くってのが基本としてあると思うんだけど、こういうのもいいなって。

『清澄』で履いてる靴はMakers?

染谷
あれは違うんですよね(笑)。
手嶋
(笑)まああのスーツであの雰囲気だとね。
染谷
いや、撮影時はまだローファーしか持ってなかったんですよ。ローファーとスーツは違うかなっていうのがあったから。今だったら間違いなく履いてますね。
手嶋
今はもう、三足くらい持ってるよね。コードヴァンのローファー、赤茶のコードヴァン、No.4ね、それと今履いてるやつか。
染谷
そう、ローファー、ストレートチップ、プレーントゥの順番で。

ブーツはどうですか?

染谷
ブーツは履かないんですよ。

今後分からないですよ

染谷
エンジニア履いちゃうとか?(笑)。
手嶋
展示会きてくれたときに気に入ってくれてはいたよね。
染谷
うん、実際に履く領域にはまだだけど、そういうタイミングはあるかもしれない。ちょっと話変わって、履き心地とスタイルの関係についてなんですけど、履き心地を優先した結果スタイルが悪くなったり、その逆もあると思うんですけど、そのことがすごく面白いというか気になる。
手嶋
それはもちろんあるよね。
染谷
実用性とデザインのバランス。Makersは、デザインがよくて履き心地もいいわけで、だから、出会って「これだな」って思えたわけですけど、新しく出るプレーントゥは、履き心地が更によくなってる。
手嶋
お客さんには申し訳ないなって、常に思ってしまいますけどね。

と言うのは?

手嶋
まあやっぱり常にバージョンアップをしていってるから。
染谷
まだ見ていないから分からないけれど、デザインが保たれたまま、機能が上がっているということですもんね。
手嶋
そういうことだね。
染谷
今後そのバランスがどう保たれていくんだろうって、そこがすごく興味深いですね。単純に日本人の足にどんどん合わせていけば、デザインが崩れてしまうとも思うし。
手嶋
それは実際にそういうことになるからね。だから、どこかで隙間を作っているというかね。当然自分の中で満足して世に出しているわけなんだけど、靴を作る工程のなかで、ちょっとわざと駄目な部分を作っちゃったりとかね、それは毎回そう。
染谷
表現ですよね。職人であり表現者。例えば写真もそうですよね。ファッションの現場だとして、洋服を見せることと、写真自体の質感とのバランスを如何に取るかというのがあると思うし。
染谷将太(俳優)× 手嶋慎(Makersデザイナー) 染谷将太(俳優)× 手嶋慎(Makersデザイナー)

手嶋さんは染谷さんにどんな靴を履かせたい?

手嶋
どうだろうねぇ、やっぱりプレーンかなとは思いますね。
染谷
プレーン持ったのはMakersがはじめてなんですよ。
手嶋
そうだったんだ。前はマーチンとか履いてたよね?
染谷
うん。他種類でいうとストレートチップ、あとはウイングチップが多かったかな。
手嶋
単純な疑問なんだけど、靴って靴でしかなくて、場所によっては履かなくてもいいものでしょ。裸足でも構わない場面がある。けど、裸で靴はおかしいわけで、もちろん現代では必須なものではあるんだけど、作っていて不思議な気持ちになることはあるよね。

お洒落は足もとからって言われたり

手嶋
まあ、言いますけどね(笑)。
染谷
意味として、お洒落は足もとからというのは実際そうだと思うんですけど、実際のコーディネイトの順番の話をすると僕は洋服を選んで、最後に靴を合わせるタイプですね。

靴と自分

染谷
これまでどんな靴を履いてきました?
手嶋
まあ、90年代で言えばポップなものも履いてたしね。

エアマックスのような?

手嶋
もちろん、もちろん。販売員をやってた時代もあったから、実際ショップで売ってもいたしね。ただ、気がついたら革靴になってたかな。
染谷
そのきっかけは?
手嶋
それは多分ね、うちの父親が毎週日曜日になると靴を磨いてたの。ほとんど全部同じような黒の革靴なんだけど、一週間毎日違う靴を履いて、それを全部磨いてた。そのイメージがどこかに残ってたんだろうね。
染谷
分かるな。男の革靴のイメージってやっぱり父親ですよね。うちの父親はスーツもそうで、一週間毎日違うスーツだったし、クローゼットを開ければきれいにパッキングされたシャツも一緒に並んでて。靴箱を開ければ同じようにずらっと。
手嶋
そうだよね、そういう時代だよね。
染谷
僕も革靴が好きだったり、スーツが好きだったりするのは、やっぱり父親のそういうイメージが残ってるからだと思う。

革靴は「はずせない」

染谷
革靴は「はずす」っていう概念がない気がする。ダサいスニーカーをかわいく見せるようにコーディネイトしたりはあるかもしれないけど、革靴はもう分かっちゃう。
手嶋
なるほどね。
染谷
ダサい革靴を履いてて、かわいいなってことはあまりないんじゃないかな。
染谷将太(俳優)× 手嶋慎(Makersデザイナー)

Makersに、はずしアイテムとしての革靴を作ってもらいましょう。1万5千円くらい、お手頃価格のセカンドライン。

一同
(笑)
染谷
雨に濡れてもいいよって(笑)。
手嶋
(笑)けど、今履いてるやつは濡れても大丈夫でしょ?
染谷
大丈夫だった。あれはなんで?
手嶋
あれはベビーカーフだから、きめが細かすぎてね、汚れが入らない。コードヴァンなんかはスウェードだから、雨の日には履かないか、極端なことを言えば、どしゃ降りで履くかどっちかだよね。中途半端に濡れたら全部濡らしてあげないと駄目。
染谷
繊細だよね。ちなみに次の革は?
手嶋
次はね、キップと言って、小牛。
染谷
ベビーではなく?
手嶋
ベビーはね、流産した牛か、生後半年以内の牛。キップはベビーの次だね。

専門的な話になってきましたね。

手嶋
こんな話になるとは思わなかった(笑)。
染谷
(笑)てっしーさんと出会ってから、革靴って面白いなって思うようになりましたね。単純にスタイルとしては好きだったし、例えば仕事で履かせてもらって、いいな、きれいだなっていうのもあったけど、この革はどうだとか、そうやって掘り下げていくことが楽しくなったのは、やっぱりMakersがきっかけ。
手嶋
なるほどね。
染谷
履き心地のことを言いはじめたのもそう。革靴は基本履いてて痛いものだと思ってたし。
手嶋
まあね(笑)。
染谷
たくさん歩くようなシチュエーションでは履かないし、職業柄毎日スーツを着るわけでもないから、履くときに痛いのはしょうがないなと。それが、普段でも履けて、かつ美しいものに出会ったわけです。褒めてるんですよ(笑)。
手嶋
(笑)そういう話を聞くと、逆に外したくなるね。
染谷
1万5千円のセカンドライン(笑)。
手嶋
違う違う(笑)。いま新しく作ってるもので言えば、ポインテッドと言って先が尖っていて、内羽という一番由緒正しいかたちのものを敢えてダサく作っちゃってるの。ビシッとスーツで決めたスタイルで履くときに、違和感が出るようにというかね、もっと格好良くすることはいくらでもできるんだけど、そこは外しているんだよね。それが自分の中ではすごく格好良いわけなんだけど(笑)、パッと見ちょっとした格好悪さが、どう思われるかなと。
染谷
それは楽しみ(笑)。
染谷
Makersの立ち上げは何年?
手嶋
2009年。松本には2010年から写真をお願いしてる。
松本(カメラマン)
まあ、履き心地悪いったらありゃしなかったね(笑)。
手嶋
そう、本当にいい意味でも、悪い意味でも酷い靴だったんだよ(笑)。
松本(カメラマン)
飾るにはいいんだよね。
手嶋
そう、インテリアとしてはOK(笑)。
染谷
知らないMakersだ(笑)。
手嶋
なにがそうさせたんだろうね(笑)。
松本(カメラマン)
でもね、美しいと感じる部分もあったけどね。
染谷
インテリアに走ったってこと?
手嶋
いや、ともかく貪欲だったんだろうね。
松本(カメラマン)
すごくラインにこだわっていたよね。
手嶋
そう、曲線美。でも途中から曲線美は靴が出すものじゃなくて木型から滲み出るものであって、そこからだね、考え方を再構築しだしたのは。
染谷
でも、いいですね。いい意味で外見から入って、ある種失敗もして、本質の部分に入っていく。
手嶋
うん、当時は写真も完璧に撮ってもらったりしてね。
松本(カメラマン)
大分こだわってたよね。履き心地とかは一切気にしてない。
手嶋
やたら写真にもお金をかけて。欲の固まりだったというかね、今見てもそれは好きなんだけど。
染谷
松本さんは一番長くMakersを見てるわけですよね?
松本(カメラマン)
うん、最初からですね。こんな風になるなんて思ってなくて、今、こんなに履き心地がいいなんて本当に信じられない(笑)。みんなこうやって履いてくれてるしね。
手嶋
本当にね(笑)。