
Feature 02ペトロールズ × 手嶋慎(Makersデザイナー)
Makersはどんなときに?
- 三浦淳悟(以下、三浦)
- ステージ、もしくはフォーマルな状況が多いかな。普段履きだと汚れちゃうからね。
- 河村俊秀(以下、河村)
- ドラムもね、最近、ステージは革靴のほうがいいんじゃないかって気がしてきてる。ただ、最初にてっしーの革靴を履いたときに靴擦れで血だらけになって、それ以来怖くて履いてない(笑)。
- 一同
- (笑)
- 手嶋
- それ言われたわ(笑)。
- 河村
- これまでの靴擦れで一番酷かったんだよね(笑)。
- 三浦
- ネガティブキャンペーンやってるんじゃないんだから(笑)。
- 長岡亮介(以下、長岡)
- でも、靴のかたちは変わるからね。革靴は。
- 河村
- そうだね、頑張ればね。その気力がなかった……。
- 手嶋
- ただ、あの頃の靴は色々な部分で攻めすぎてて、人を気にしない靴ではあったからね。
Makersとの出会いは?
- 長岡
- 俺が最初にてっしーと出会ったんだよね。
- 手嶋
- そうそう、松本(直也)さん経由かな。
- 長岡
- そう、まっちゃん経由だね。
- 手嶋
- 2010年、いや違うな、EVE2009(※2008年12月31日発売のミニアルバム)が出た頃の話だ。下北沢GARAGEのライブで紹介してもらったのが最初なんだけど、そのときはなんかいやらしい感じだった気がするな、俺。
- 長岡
- 無駄に謙虚な感じではあったね(笑)。
- 手嶋
- そうだね(笑)。記憶に残ってるのは、ペトロールズに靴を履いて欲しいなと思って、どんな靴が好みかを聞くために下北沢のやるき茶屋で待ち合わせて。りょっちゃんはそのとき近くにいたんだけど、自転車の鍵を忘れて、どこに停めればいいのか分からないからって来なかった。
- 河村
- それだけの理由で来なかったんだ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 手嶋
- それでジャンボさんとボブさんと。松本さんも後から来たのかな。
- 長岡
- まっちゃんはそれ覚えてる?
- 松本
- 全然覚えてない。
- 三浦
- やる気茶屋だったっけ?
- 長岡
- 庄屋だったとこ?踏切のとこだよね。
- 手嶋
- 多分そうだったと思うな。これは記憶に古い中ではよく覚えてる話。
結果どんな靴に?
- 三浦
- うん、今日履いてるやつなんだけどね。

いい話になってきましたね
- 三浦
- ははは(笑)。
- 手嶋
- でも、頼まれたのと違う靴を渡したんだけどね。
- 三浦
- あー、亮介の履いてるベルトの付いたやつがいいなって言ったんだっけ。
- 手嶋
- そうそう、ネイビーのボタンブーツ。でも、今履いてもらってる靴を渡した。
- 三浦
- 一緒になってもしょうがないもんね。そう、今履いてるこれは革靴で唯一靴擦れしなかった靴かも知れない。
- 河村
- あれあれあれ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 三浦
- 柔らかいんだよね。
- 手嶋
- うん、それに浅い靴だから。
- 三浦
- そうだね。だから普段履きでも大丈夫。
- 手嶋
- いい意味で、足を無視して作ってはいるんだけど(笑)。
- 三浦
- そうなの?俺は結構、甲が高くていびつな足なんだけどね。
- 手嶋
- その靴の木型は、はじめて自分で削ったものかも。
- 三浦
- スニーカーでもそうなんだけど、甲が高いから紐のところが開いちゃうんだよね。
- 長岡
- 間抜けな感じに見えちゃうよね。
- 三浦
- そうそう。けど、これはぴったりくっついてる。
- 長岡
- さすがや。
- 三浦
- なんでなの?だって計測とかしてないよ。
- 手嶋
- なんか、あの、まぐれ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 三浦
- 今日来るときに思ってたんだけど、革靴のこのコツコツって音がね。

- 手嶋
- うん、それがいいんだよね。
- 三浦
- 会社に入んなきゃこの音は出せないと思ってたけども(笑)。
- 一同
- (笑)
- 手嶋
- 今はその作りはやめてしまってるんだけど、そろそろやりたい気持ちになってるところ。
- 三浦
- マッチが擦れる底というかね。
- 手嶋
- そうそう。
- 長岡
- 俺のローファーね、左は調子いいんだけど、右の甲がね。
- 手嶋
- 利き足だから甲が分厚くなってるのかも知れない。
- 長岡
- 右足の親指のしびれが取れなかったんだけど、結局は履いて手懐けた。
- 手嶋
- ローファーはそういうものだったりするかもね。自分の足にするしかないっていうか。
- 三浦
- 見た目が気に入ってると、多少痛くても無理して履くよね。俺色に染まれじゃないけど。
- 長岡
- 特に革はね。
- 三浦
- けど、それで親指の爪剥がした人知ってるけどね(笑)。
- 一同
- (笑)
- 三浦
- それはもうサイズが違うでしょって(笑)。
- 河村
- 絶対合ってない(笑)。
- 手嶋
- うちのローファーも、普段より1センチ小さいサイズを履いて、無理矢理に伸ばすっていうお客さんが結構いて。それで自分の足のかたちにするのが醍醐味じゃないけど。
- 長岡
- その伸びちゃったものは、カッコ悪くはないわけ?
- 手嶋
- それはね、意外といいんだよね。オーダーメイドだと、人の足って基本的にブサイクだから、合わせて作ると変なかたちにもなりかねないわけで、それよりは既製品を合わせていったほうが見た目はいいんじゃないかな。もちろん、足にキチンと合わせたい場合はオーダーメイドがいいだろうけど、そこはどちらを取るかだよね。ただ、見た目って大事だからね。
- 長岡
- ローファーは、突っ掛けみたいに履いてくれって言ってたよね。
- 手嶋
- そうそう、安いものじゃないから言いづらいとこはあるんだけど、そういうモノであって欲しいとは思うね。
- 長岡
- うん、それはいいね。
- 三浦
- 靴は、全身のファッションの中でも一番重要じゃないかって思うんだよね。上がいくらきまっててもさ、足もとが駄目だとずっこけちゃう。
- 長岡
- うん、心意気が出るよね。
- 手嶋
- 逆に、靴がよくて、上が駄目なときなんかね、なんか理由があるのかなみたいに考えちゃう(笑)。
- 一同
- (笑)
- 手嶋
- そういう意味では面白いパーツだよね。
- 三浦
- 今日はいつものスニーカー履いてるときみたいな格好で、靴だけ革靴なんだけど、全然気分違うよね。
- 長岡
- 実際、合ってるしね。
- 三浦
- 電車を乗り換えるときに聞こえるカツカツって音でさ、俺、できる男なんじゃないかって(笑)。
- 長岡
- そうじゃないすか~(笑)。
- 一同
- (笑)
- 長岡
- けど、よく似合ってるよね。
- 三浦
- ライブでも使ってるしね。元々そんなに革靴は履かないんだけどね。
- 手嶋
- ニューバランスのイメージが強い。
- 一同
- (笑)
- 長岡
- スニーカー好きなんだよね。
- 三浦
- スニーカーばっかり。

ボブさんの今日の足元は?
- 河村
- ごめん、スニーカーだね(笑)。
- 一同
- (笑)
- 三浦
- これですよ(笑)。
- 長岡
- これだね(笑)。
- 河村
- ぶっちゃけね、本当にMakers履いてこようと思ってたんだけど、やっぱり靴擦れが怖くて……。
- 一同
- (笑)
- 河村
- それでやめちゃった(笑)。
- 長岡
- はっはっはっ(笑)。
長岡さんのブーツについて
- 手嶋
- 渡したのは渋谷のNESTだったかな。
- 長岡
- ボタンブーツね。
- 手嶋
- 今でも作って欲しいと言われるんだけどね、もう廃盤にしちゃったから。
- 三浦
- そうなの?
- 長岡
- カッコいいのにね。
- 三浦
- 女の子にもいいと思うんだけどな。
- 手嶋
- うん、もとは女性が履いてたデザインだから。
- 河村
- なんで廃盤になったの?
- 手嶋
- あの頃は金額無視して作って、無理矢理安く売ってたんだけど、いまは難しくて10万円とかになっちゃうからね。
- 長岡
- 俺、ブーツにトラウマがあるんだよな。昔、カントリーバンドで履いてみたの。父親にね、ウエスタンシャツとブーツを身に付けたほうがいいんじゃないかって言われて。そしたら、なで肩だし胸板は薄いしで、シャツも何も全然似合わない(笑)。
- 河村
- カウボーイにそんなやついないよね(笑)。
- 一同
- (笑)

ボブさんはブーツで靴擦れを?
- 河村
- そうそう。
- 手嶋
- 紐じゃなくて、無理矢理に足を入れて履く靴だから。
- 長岡
- もう履いてないのボブは?
- 河村
- 履いてないね(笑)
- 三浦
- そもそもボブは持ってないんだと思ってた(笑)。
- 長岡
- それくらい目にする機会がないからね(笑)。
- 三浦
- そうそう。で、どういうブーツなの?ボタン?
- 河村
- ボタンだったと思う、確か……。
- 長岡
- ボタンだったと思う!?
- 手嶋
- ボタンじゃないよ(笑)。
- 三浦
- もう家のどこにあるかも分かってないよ(笑)。
- 河村
- てっしーごめんね……。
- 手嶋
- 新しいのはちゃんと履いてもらえるやつを渡すよ(笑)。
- 長岡
- ボブは他にはブーツ持ってないの?
- 河村
- ブーツ自体を?
- 長岡
- そうそう。
- 河村
- 一足持ってたかなー。
- 三浦
- 長靴じゃないでしょ?
- 河村
- 長靴みたいなかたちの、すごくダサいやつだったね……。だから、てっしーからブーツもらったときは本当に嬉しかったんだよ。シークレットブーツみたいに背が高く見えるやつでね。
- 手嶋
- そうね、ヒールが4センチくらいあるから。
ジャンボさんは他にも何足か?
- 三浦
- Makersは今履いてるのだけかな。革靴は何足か持ってるけど。
- 手嶋
- 自然と仕事は関係ない付き合いになってきたから、そういうのが楽な感じはあるけどね。
ペトロールズの音楽について
- 手嶋
- 誰かが言ってたことではあるんだけど、音が3Dに聞こえたというかね、そういう感覚はペトロールズがはじめてで。
- 河村
- 今は進化して4DXくらいだからね(笑)。
- 手嶋
- 水が出てきたり(笑)。
- 河村
- 風もふいて(笑)。
ペトロールズから受けた影響
- 手嶋
- それはもう全体としてあるかな。ビジュアル、モノづくりの姿勢、付き合う人達もね、ガチャガチャしてる人が周りから減っていったし、色々なことがシンプルになっていったのは間違いない。音楽の話に戻ると、ペトロールズにはノスタルジーを感じたりもするんだよね。
- 長岡
- というと?
- 手嶋
- 何て言えばいいのかな、例えば車で走っているときに聞く曲ってすごく選ぶんだけど、単純に若い頃に聞いてた曲を流せば、そういう気持ちになれるってわけでもなくてね。
- 長岡
- ペトロールズは昔から聞き込んできた音楽じゃないのに、肌触りがよくて馴染むみたいな、そういうこと?
- 手嶋
- うん、そういう感覚。
- 三浦
- サウダージだね。
- 長岡
- 昔から友達だった気がするような。
- 手嶋
- そうそう、勝手にそういうふうにね。
- 河村
- てっしーに対して、同じように思うけどね。だから、甘えがあるし、遠慮もない。そんなにいつも会ってるわけじゃないんだけど。
- 長岡
- だから、靴をどこにしまいこんでも大丈夫(笑)。
- 手嶋
- 靴がどうだろうが関係ない(笑)。
- 河村
- そういう間柄ではない感じはあるよね。

今のMakersは靴擦れしないかも
- 河村
- それはね、お互い前に進んでるから(笑)。
- 長岡
- ボブのブーツ、今度持ってきてよ。
- 手嶋
- あるの?ないでしょ?
- 長岡
- 売り飛ばしたんじゃないの?(笑)。
- 河村
- 売り飛ばしてはないでしょ(笑)。あるんじゃねえかな……。
- 三浦
- あるんじゃねえかな(笑)。
- 河村
- もうごめん、本当に自信がないわ(笑)。
- 長岡
- これは、センセーショナルだよね(笑)。
スタイルの変遷
- 三浦
- 最初は、見た目からじゃないかな。子供の頃に見てた歌番組とかで、カッコいいと思ったものに飛びついてたわけだから。何かが変わっていくタイミングということで言えば、やっぱり、ボストンに行ったときかな。それまではロックしか知らなかったんだけど、自分が憧れてるね、そういうロックの人たちは音楽大学とか行ってないわけで。けど、自分はそういう道を選んだわけだから、それまでの自分と同じだと、やってることに矛盾が生じてしまうというかね。
- 長岡
- あるものをトレースしているだけじゃしょうがないというか。
- 三浦
- うん、だからこの世に存在している音楽を、全部とは言わないけど聞き漁って。見た目の話で言えば、その人の写真はジャケットには一枚しか載ってないようなレコードを聞いてね、それで憧れるってことは音に憧れたわけだから。そうやって、趣味が変わっていったんじゃないかな。

- 長岡
- アメリカ行く前はどんな格好してたの?いや、プロポーションに対して珍しいと思うんだよね、細いパンツを履くとかさ、すごいカッコいいと思うの。はじめて会った頃はどうだったっけ。
- 三浦
- スラックスみたいなの履いてた?
- 長岡
- あ、スラックスかもね。そうだ。
- 三浦
- 金もないから古着屋で揃えるしかなくてね。70年代のソウルファンク好きだったから、そういう感じだったかもね。
- 長岡
- うんうん。
- 三浦
- 千鳥格子のパンツにシャツ、ハンチングみたいな。
- 長岡
- けど、今はまたロックな感じに戻ってきたよね。
- 三浦
- 体型なのかなやっぱり。あんまり太いのが似合わないみたいで。
- 長岡
- 分かってるんだね。
- 三浦
- いや、言われた(笑)。自分じゃ分からないんだよね。
- 河村
- ボストンでは生徒はみんな同い年くらいだったの?
- 三浦
- いや、全然そんなことない。むしろ、高卒で行ってる自分が珍しかったくらいかな。日本で一回仕事についてからって人もいたしね。とにかく、そこで思ったのは、本当に自分はなにも知らなかったんだなって。
ボブさんは?
- 河村
- 俺は、見た目から入った感じでもないような気がするんだけど……。
ビジュアル系のコピーやってたのでは?
- 河村
- いや、けどその前は堀内孝雄とか聞いてたしね。それは曲からだから。ビジュアル系も、最初は見た目とか知らずに、友達から借りたテープで聞いて、いい曲だなって思ってたわけで。ただ、一応、ビジュアル系みたいになってみようかなみたいのはあって。
- 一同
- (笑)
- 河村
- 天パで、ああいう髪型できないから、訳分かんない赤いバンダナ巻いたりして。
- 長岡
- 今、赤いバンダナのこと思い出してた(笑)。
- 河村
- ハルクホーガンみたいな(笑)。
- 手嶋
- ははは(笑)。
- 河村
- まあ、あとは憧れのプレイヤーの動きを真似したりというのはあったかも知れないけど。
- 手嶋
- まあ、確かにテープから聞いたりして、ビジュアルなんかは後から分かったということはあったよね。
- 河村
- そうそう。俺の場合は本当に世界が狭くて、日本のバンドが全てだと思ってたから。外国のバンドは一切知らなかった。けど、高校に入って亮介に出会って、それで洋楽のこれを聞けあれを聞けってことになって。
- 手嶋
- なるほどね。
- 河村
- そうすると、できないプレイも出てきて、見た目だけじゃどうにもならないという話になってくる。亮介は?
- 長岡
- スタイルね。自分でもすごい不思議だけど、例えばカントリーのライブハウスでウエスタンシャツ着てテレキャスター弾くみたいなのはあると思うんだけど、それをスウェット着て、フライングVで、敢えてやってみたいというか。そういう見た目が好きじゃないってことじゃなくて、あるスタイルにはめていくということが好きじゃないのかな。ロックだからブーツとかでなく、そこは外したいんだよね。特定の何かに憧れてこうしてるんだなというのが、見えるのはやだ。ペトロールズはそういう感じにはなってないんじゃないかな。色々な人たちが色々なことをいう、それでいいと思ってる。
- 三浦
- ボストンに行ったときも、この人みたいになりたいとか、そういうのはなかったかな。だからこそ行ったんだと思うんだよね。大学はJAZZの大学だったんだけど、JAZZがやりたかったわけではないしね。アンサンブルできればいいと思ってたから。
- 手嶋
- 自分が今見てるもの、聞いてるものに影響をされるというのはあると思うんだけど、ペトロールズは、それを自分のものにしている人たちというか。だから一緒にいて楽だし、話しやすし、心地よいんだよね。
- 長岡
- 真似事はしたくないけど、先人たちへのリスペクトはちゃんとあって。その上で何にも似てないものをどうやって作ろうかな、どうやって音を出していこうかなということだね。
